北海道の市の多くが人口を減らすなか、この町は人口を増やしてきた。その理由は、地図の上の一点に尽きる。札幌と空の玄関口のちょうど中間 ── その位置が、住む人と働く場の双方を、この町に引き寄せた。位置という、動かせない資源が町の人口を決めた経緯を知らずに、この市の数字は読めない。恵庭市の数字は、二つの都市の中間という位置が人口増を作った来歴が刻まれた町の記録だ。
北海道の石狩振興局南部、札幌市と新千歳空港のほぼ中間に位置する市。大正の末に鉄道が通り、戦後は住宅団地と工業団地の双方を計画的に整え、企業誘致と住宅整備の二つで人口を増やしてきた。人口は二〇〇〇年の 65,239 人から二〇二〇年の 70,331 人へ、二〇年で五千人あまり増えている。北海道で人口を増やしてきた数少ない市の一つだ。私 (Atlas) がここで読みたいのは「ベッドタウン」という記号ではなく、二つの都市の中間という位置が、現在の人口や地価にどう翻訳されているか、という因果の筋道だ。
01 · いまの恵庭市を、数字で見る
直近の国勢調査で人口は約七万人 (二〇二〇年 70,331 人)。二〇〇〇年の 65,239 人から二〇年で五千人あまり増えており、北海道の市としては珍しく増加の側にある。六五歳以上の割合は二〇二〇年で 28.0% と、道内の市のなかでは低めにとどまる。子育て世帯の割合は二〇二〇年で 20.7% と、これも高めだ。
住宅地の公示地価は一㎡あたり五万一千円ほどで、内陸の市としては高い部類に入る。財政力指数は二〇二三年度に 0.59 で、自前の税収で歳出の六割ほどを賄える、道内の市のなかでは体力のある水準だ。保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロ。これらの「増えている・若い・体力がある」という数字が、なぜこの町に揃うのかは、二つの都市の中間という位置の来歴を遡らないと読めない。
出典: 総務省 国勢調査 / 国土交通省 地価公示・都道府県地価調査 / 総務省 地方財政状況調査 (財政力指数) / こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ
02 · 札幌と空港の中間・鉄道・住宅と工業の二枚看板 — 数字の背後にある来歴
この町の骨格は、札幌市と空の玄関口のちょうど中間という位置と、そこを貫いた鉄道、そして住宅地と工業団地を計画的に整えた二枚看板によって据えられている。始まりの層は、位置である。札幌と空港を結ぶ線の上の中間という、動かせない地理が、この町に人と物の両方を呼び込む素地を与えた。大正の末に鉄道が通り、二つの都市を結ぶ線上の駅が、町のはじまりの核となった。
その位置を、この町は二枚の看板で生かした。一枚は住宅である。戦後、計画的に造成された住宅団地が、札幌へ通う人々の住む場を用意した。もう一枚は工業だ。空港と高速道路に近いという利点を生かし、工業団地を整えて企業を誘致した。住む場と働く場の双方を町なかに用意したことが、札幌のベッドタウンとしての性格に加えて、町そのものに雇用を生む構造をもたらした。住宅だけの郊外でも、工場だけの工業地でもなく、その両方を持ったことが、この町の人口を増やし続けた。札幌と空港の中間、鉄道、そして住宅と工業の二枚看板。動かせない地理を、計画された二枚の看板で生かしきった ── 恵庭の人口増は、漠然とした魅力ではなく、この具体的な工夫の積み重ねの上に立っている。
出典: 恵庭市 沿革 (1926 鉄道 (現 千歳線) 開通で恵庭駅・1970 市制・1980 恵み野ニュータウン分譲・1988 恵庭テクノパーク分譲で住宅と工業を整備 概説) / 恵庭市 (概要・北海道内で人口が増加している数少ない市の一つ)
03 · 人口が増える町では、子育て世帯の割合も高く保たれる
人口を増やしてきたこの町では、生活の指標も、減少が続く市とは違う動きを見せる。子育て世帯の割合は二〇二〇年で 20.7% と、道内の市のなかでは高めに保たれている。これは、札幌へ通える距離に住む場があり、町なかにも工業の働き口があるという二重の引力が、子育て期の世帯をこの町に留めてきたことの表れと読める。
保育の利用定員は二〇二四年の 1,189 人から二〇二五年の 1,202 人へと増やされ、待機児童は両年ともゼロを保っている。人口が減る町では定員に余裕が生まれて待機児童がゼロになることが多いが、この町の場合は、増える需要に定員を合わせ続けた結果としてのゼロだ。同じ「待機児童ゼロ」でも、その背景が需要の縮小なのか、需要に追いつく整備なのかで、町の実像はまるで違う。恵庭の数字は、後者の側にある。
出典: 総務省 国勢調査 / こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ
04 · 二つの都市の中間という位置を、二枚看板で生かした市
恵庭は、二つの都市にはさまれた固有の機能を保ち続けている。札幌と空の玄関口のちょうど中間という位置は、人を住まわせる郊外としても、企業を呼ぶ工業地としても働く。鉄道と高速道路がこの町を貫き、空港へも札幌へも短い時間で出られる。住宅と工業の二枚看板は、その位置を最大限に生かすための、計画された選択だった。花のまちづくりに力を入れてきたことも、住む場としての町の性格を補強している。
ただし、その人口増は、二つの大きな都市に挟まれているという位置に強く依存している。札幌へ通える住宅と、町なかの工業の働き口。この二枚看板が、中間という位置を最大限に生かして人口増の原動力となった。だが、人と物の流れを受け止めるその中間という性質は、二つの極が健在である限りの強みでもある。中間に立つことが恵庭を伸ばし、それと同じ位置が、二つの都市への依存という構造をこの町に深く書き込んでいる。
出典: 恵庭市 (概要・北海道内で人口が増加している数少ない市の一つ) / 恵庭市 沿革 (1926 鉄道 (現 千歳線) 開通で恵庭駅・1970 市制・1980 恵み野ニュータウン分譲・1988 恵庭テクノパーク分譲で住宅と工業を整備 概説)
05 · Atlas メモ — 二つの極に挟まれた位置が、増勢の中身になる
恵庭の数字を並べると、二割の人口増・高齢化率 28.0%・子育て世帯率 20.7%・地価五万一千円・財政力 0.59 と、北海道の市のなかでは珍しく「増えている・若い・体力がある」指標が揃う。だが私(Atlas)は、好調な数字ほどその裏づけを具体で確かめる。ここでまず読みたいのは、その人口増が「二つの都市の中間という位置」と「住宅と工業の二枚看板」という、二つの具体に支えられている、という点だ。北海道の市の多くが人口を減らすなかでの増加は、漠然とした魅力ではなく、札幌へ通える住宅と、町なかの工業の働き口という、二つの引力の合わさった結果として読める。位置という動かせない資源を、計画的な整備で生かしたのが、この町の人口増の中身だ。
もう一つ考えたいのは、その強みが二つの大きな都市に挟まれているという位置に依存している、という点だ。中間という位置は、二つの極が健在である限りの強みでもある。だからこそ、財政力 0.59 という道内の市のなかでは厚い自前の税源を保てているかどうかが、二つの極への依存の度合いを測る一つの目安になる。位置という動かせない資源を、計画でどこまで自前の力に変えていけるか ── 恵庭の明日は、その問いの答え方にかかっている。
出典: 総務省 国勢調査 / 恵庭市 (概要・北海道内で人口が増加している数少ない市の一つ) / 恵庭市 沿革 (1926 鉄道 (現 千歳線) 開通で恵庭駅・1970 市制・1980 恵み野ニュータウン分譲・1988 恵庭テクノパーク分譲で住宅と工業を整備 概説)
編集メモ: 数値・出典はすべて公的統計が由来です。 文体は Atlas の語り口に揃え、 AI (atlas-handcrafted-reverse-v1 (wave28-east 2026-06-04)) が文章の整え方を担当しています。 評価語・予測語 (「狙い目」「魅力的」 等) は意図的に載せていません。 改訂識別子: w28e_ec5


