この町は、北海道の本島で最も東の端にある。納沙布の岬に立てば、目の前の海に、いくつもの島が横たわって見える。それらの島は、かつてこの町と同じ国に属し、漁の場として人々の暮らしを支えていた。だがある時を境に、その島々は手の届かない場所となり、近くの漁場も遠ざかった。目の前に島を望みながら、その島へ渡れない港 ── 最東端のこの町は、いまも人口を減らし続けている。根室市の数字は、目の前の島々と、遠ざかった漁場という来歴が刻まれた町の記録だ。
北海道の本島の最も東の端、根室半島に開ける市。この町は、北海道東部で早くに国が定められた地として、また納沙布岬の沖に島々を望む漁業の港として、歴史を歩んできた。人口は二〇〇〇年の 33,150 人から、二〇〇五年の 31,202 人、二〇一〇年の 29,201 人、二〇一五年の 26,917 人、二〇二〇年の 24,636 人へと、二〇年で八千人あまりを減らしてきた。私 (Atlas) がここで読みたいのは「最東端」という記号ではなく、目の前の島々と遠ざかった漁場という来歴が、現在の人口や財政にどう翻訳されているか、という因果の筋道だ。
01 · いまの根室市を、数字で見る
直近の国勢調査で人口は約二万五千人 (二〇二〇年 24,636 人)。二〇〇〇年の 33,150 人から、二〇〇五年の 31,202 人、二〇一〇年の 29,201 人、二〇一五年の 26,917 人を経て、二〇二〇年には 24,636 人と、二〇年で八千人あまりが減った。北海道東端の漁業の市らしく、その坂はやや急だ。
中身を見ると、最東端の漁業の港の姿が出る。六五歳以上の割合は二〇〇〇年の 18.0% から二〇二〇年の 35.1% へと、二〇年で一七ポイントほど上がり、三割を超えた。子育て世帯の割合は二〇二〇年で 15.6%。就業率は二〇二〇年で 57.8% と、北海道の市のなかでは高めだ。これは港の漁と水産加工が働き口を支えていることの表れと読める。保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロ。財政力指数は二〇二三年度に 0.34 と、自前の税収では歳出の三分の一あまりを賄う水準にある。目の前に島々を望む最東端の港の市が、人口を減らしながら街の年齢を上げる姿が、数字に出ている。なぜこの形なのかは、島と漁場の来歴を遡らないと読めない。
出典: 総務省 国勢調査 / 総務省 地方財政状況調査 (財政力指数) / こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ / 国土交通省 不動産情報ライブラリ
02 · 本島の最東端・目の前の島々・遠ざかった漁場 — 数字の背後にある来歴
この町の骨格は、北海道の本島の最東端という位置と、納沙布岬の沖に望む島々、そしてそれらの島とともに遠ざかった漁場によって据えられている。始まりの層は、位置である。この町は、北海道の本島で最も東の端にある。明治の初め、北海道の東部でいち早くこの地に国が定められ、開拓の出張所が置かれた。海に向かって突き出した半島の先という位置が、この町の土台であった。
その位置に、島々の来歴が重なる。納沙布の岬に立てば、目の前の海に、いくつもの島が横たわって見える。それらの島は、かつてこの町と同じ国に属し、近くの海とともに、人々の漁の場であった。漁の港は、目の前の豊かな漁場を頼りに栄えた。だがある時を境に、それらの島々は手の届かない場所となり、島の周りの漁場も遠ざかった。目の前に島を望みながら、その島へは渡れず、近くの漁場にも自由に出られない ── そうした境遇のなかでも、この町の港は、遠い海まで出て魚を獲り、とりわけ秋の一つの魚の水揚げでは全国一を誇るまでになった。本島の最東端、目の前の島々、そして遠ざかった漁場。この三つは、いずれも「海へ突き出た半島の先」という一つの位置から派生している。最も東という地理が、目の前に望む島とその漁場を遠ざけられてもなお漁に生きる、という根室の生き方を決めた。
出典: 根室市/北海道本島の最東端と根室国 (北海道本島の最東端にあたる市・1869〔明治2〕開拓使の根室出張所が置かれ根室国が定められた・納沙布岬の沖につらなる歯舞群島/色丹島/国後島/択捉島が北方領土で、根室市はその隣接地域である 概説) / 根室市/漁業と花咲港のサンマ (古くから交易港の歴史を持つ港町で、近海の漁業基地・花咲港はサンマの水揚げ量が日本一を誇る全国有数の水産物供給拠点で、漁の最盛期 8〜10月が最も活気づく 概説)
03 · 漁場を遠ざけられた最東端で、人口を減らす
根室市の特徴は、最東端という位置と、遠ざかった漁場という来歴を抱えながら、人口を二〇年で八千人あまり減らしている点にある。二〇〇〇年の 33,150 人から二〇二〇年の 24,636 人まで、減りは二割を超える。目の前の島々とその漁場を遠ざけられたことは、この港の漁の場を狭め、町の暮らしの土台を細らせる方へ働いてきた。加えて、本島の最東端という位置は、より大きな都市から遠く、若い世代が学びや働きの場を求めて町を離れやすい。漁場と距離という二つの条件が、人口の流出を後押ししてきた、と読める。六五歳以上の割合が二〇二〇年で 35.1% と三割を超えたことは、その表れだ。
その一方で、就業率は二〇二〇年で 57.8% と北海道の市のなかでは高めだ。これは、遠ざかった漁場を抱えながらも、遠い海まで出る漁と、水揚げされた魚を加工する生業が、いまも働き口を一定の厚みで支えていることの表れと読める。保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロで、子育て世帯の割合は二〇二〇年で 15.6%。財政力指数 0.34 は、自前の税収では歳出の三分の一あまりを賄う水準で、漁と水産加工の生業が税源をいくらか支えている。漁場を遠ざけられた最東端の港の市は、いまは人口を減らしながら、街の年齢を上げている。人口の減りは二割を超え、高齢化は三割を超え、就業率は高め。減る人口の傍らで就業率が高いというねじれは、海の遠さと漁の粘りという二つの力が同じ港で綱引きしている、と読めば腑に落ちる。一つの数字を切り出すだけでは、このねじれは見えてこない。
04 · 最東端の港が、目の前の島と漁場を遠ざけられた
根室という町には、二つの性格が重なっている。一つは、北海道の本島で最も東の端にあり、東部で早くに国が定められた地である、という位置だ。もう一つが、納沙布岬の沖に、かつて同じ国に属した島々を望み、その島と漁場を遠ざけられながら、なお漁に生きてきた、という性格だ。そして、その港は遠い海まで出て、秋の一つの魚の水揚げで全国一を誇るまでになった。海へ突き出した半島の先という地形が、目の前の豊かな漁場と、最東端という遠さの双方を、この町に与えた。
要するに根室は、最東端の港が、目の前の島と漁場を遠ざけられた町だ。本島の最東端から、目の前の島々、遠ざかった漁場、そして全国一の水揚げまで ── そのすべてを「海へ突き出した半島の先」という一語の地理が貫いている。海へ突き出した半島の先という位置は、豊かな漁場を授けると同時に、最東端という遠さを背負わせた。授けられた豊かな漁場と、選んだわけでもない最東端の遠さと ── そのどちらが、この港の明日をより強く決めるのだろう。
出典: 根室市/北海道本島の最東端と根室国 (北海道本島の最東端にあたる市・1869〔明治2〕開拓使の根室出張所が置かれ根室国が定められた・納沙布岬の沖につらなる歯舞群島/色丹島/国後島/択捉島が北方領土で、根室市はその隣接地域である 概説) / 根室市/漁業と花咲港のサンマ (古くから交易港の歴史を持つ港町で、近海の漁業基地・花咲港はサンマの水揚げ量が日本一を誇る全国有数の水産物供給拠点で、漁の最盛期 8〜10月が最も活気づく 概説) / 総務省 国勢調査
05 · Atlas メモ — 二つの遠さを背負って、なお全国一の水揚げを保つ
根室の数字を並べると、二〇年で八千人あまりの人口減・高齢化率 35.1%・子育て世帯率 15.6%・就業率 57.8%・財政力 0.34 と、最東端の漁業の港の市の指標が並ぶ。だが数字の背後にある力の出どころを問うのが、私(Atlas)の癖だ。ここで読みたいのは、この町の人口減が「町自身の選びの外にある二つの遠さ」によって押されてきた、という点である。一つは、目の前に望みながら渡れない島々と、そこにあったはずの漁場という、海の向こうの遠さ。もう一つは、本島の最東端という、より大きな都市からの陸の遠さ。この二つの遠さは、いずれもこの町が自ら選んだものではなく、町の暮らしの土台を外から細らせてきた。
もう一つ考えたいのは、その二つの遠さを背負いながら、この町の就業率が北海道の市のなかでは高め、という点だ。私の見方では、その背景には、遠ざかった漁場を抱えてもなお遠い海まで出る漁と、水揚げを加工する生業が、町の働き口を支え続けてきた、という事実がある。秋の一つの魚の水揚げで全国一を誇るというのは、その粘りの象徴だ。海の向こうの遠さと陸の遠さを、町は自ら選んだのではなく外から背負わされた。その不利のなかでなお全国一の水揚げを保つ ── 財政力 0.34 の裏に私が読むのは、その粘りこそ、最東端の港のいちばんの強みだということだ。
出典: 総務省 国勢調査 / 根室市/北海道本島の最東端と根室国 (北海道本島の最東端にあたる市・1869〔明治2〕開拓使の根室出張所が置かれ根室国が定められた・納沙布岬の沖につらなる歯舞群島/色丹島/国後島/択捉島が北方領土で、根室市はその隣接地域である 概説) / 根室市/漁業と花咲港のサンマ (古くから交易港の歴史を持つ港町で、近海の漁業基地・花咲港はサンマの水揚げ量が日本一を誇る全国有数の水産物供給拠点で、漁の最盛期 8〜10月が最も活気づく 概説)
編集メモ: 数値・出典はすべて公的統計が由来です。 文体は Atlas の語り口に揃え、 AI (atlas-handcrafted-reverse-v1 (Daiki 2026-06-02)) が文章の整え方を担当しています。 評価語・予測語 (「狙い目」「魅力的」 等) は意図的に載せていません。 改訂識別子: wave27e_



