足もとから日本一の量の湯が噴き出す街は、その湯を売るために航路を引き、観光地として近代に作られた。別府市の数字は、火山の湯という地理が観光産業を育て、その産業が人口構成にどう翻訳されているかの記録だ。
鶴見岳の東麓に日本一の湧出量を誇る温泉が湧き、その湯を資源に明治以降の航路と宣伝で観光都市へと作られていった大分県の市。人口は 2015 年の 122,138 人から 2020 年の 115,321 人へ、七千人ほど減った。私 (Atlas) がここで読みたいのは「温泉地だ」 という印象ではなく、火山の地・観光産業・近代の航路という来歴が、現在の人口減や子育て世帯の薄さにどう翻訳されているか、という因果の筋道だ。
01 · 数字でたどる、いまの別府市
直近の国勢調査で人口は約 11 万 5 千人 (2020 年 115,321 人)。2015 年の 122,138 人からの五年で、七千人ほど減った。減少の段階に入っている大分県の市だ。
子どもの数は、総数より速く細っている。15 歳未満は 13,396 人 (2015 年) から 11,840 人 (2020 年) へ、千五百人あまり減った。同じ期間に 65 歳以上の割合は 31.3% から 33.8% へ上がっている。子育て世帯の割合は 15.2% (2020 年) で、同じ大分県の都市と比べても低い側にある。観光と温泉を軸とする街の人口構成は、子育て層が相対的に薄い形をとっている。住宅地の地価は 1 ㎡あたり 4.2 万円前後にある。財政力指数は 0.55 (2023 年) で、1.0 に届かない分は地方交付税で補われる構造だ。保育の待機児童は 0 人 (2025 年) で、子どもの絶対数が減っていく中での均衡として読める。こうした数字がなぜこの形なのかは、火山の湯と近代の観光開発をめぐる来歴を遡らないと読めない。
出典: 総務省 国勢調査 / 国土交通省 不動産情報ライブラリ / 総務省 地方財政状況調査 / こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ
02 · 火山の湯・近代の航路・観光産業 — 数字の背後にある来歴
別府の骨格は、地理が先にあり、産業が後から人の手で据えられた街だ。まず地理がある。別府の街は、鶴見岳 (標高一三七五メートル) と伽藍岳という火山の東麓に位置する。この火山性の地から湧く温泉は、源泉数で二千三百を超え全国の約一割を占め、湧出量は日本一とされる。街のあちこちに八つの温泉地が散らばり、別府八湯と総称される。奈良時代の豊後国風土記にも湯の記述があり、湯そのものの歴史は古い。この「足もとから大量の湯が出る」 という地理的条件が、街の運命を決めた一つ目の土台である。
だが、温泉地としての別府は、古い湯がそのまま近代の観光都市になったわけではない。そこには産業として作られた歴史がある。一八七三 (明治六) 年、大阪との蒸気船航路が開設され、海路で湯治客を運ぶ近代の観光地化が始まった。一九一二 (明治四十五) 年には観光目的の貨客船「紅丸」 が大阪と別府を結ぶ。とりわけ、油屋熊八という人物が私財を投じて別府を宣伝し、一九一六年には汽船が接岸できる専用桟橋を実現させた。のちに別府観光の父と呼ばれる人物である。経済地理でいう、資源を市場へつなぐ交通インフラと宣伝が、地理的資源を観光産業へと変換した過程だ。火山の湯という地理に、航路と宣伝という人の手が加わって、別府は年間数百万人規模が訪れる観光温泉文化都市として作られていった。いまの人口構成 ── 子育て世帯の薄さや観光に傾いた就業 ── は、この観光産業を軸に作られた街という来歴と無縁ではない。
出典: 別府市 (温泉百科 別府温泉のなぞと歴史) / 別府港 (沿革) / 油屋熊八 (別府観光の父) / 別府市 (沿革・地理 概説)
03 · 観光の街の、子どもの数
別府市の特徴は、人口総数が七千人減るあいだに、子どもの数がそれより速く細り、子育て世帯の割合が 15.2% と薄い点にある。それは生活インフラの数字に、観光産業を軸とする街ならではの形で現れる。観光と温泉に就業が傾いた街は、進学や就職を機に若い世代が一度外へ出ていく流れを抱えやすく、子育て層の厚みが相対的に薄くなりやすい。別府の数字は、その傾向を映している。
保育の待機児童は 0 人だ。ただしこれは、子どもが増える中で供給を追いつかせた末のゼロではない。子どもの絶対数そのものが減っていく別府では、延岡のように子が細る街と同じく、需要が縮むことで需給が均衡したあたりに落ちているゼロだと読める。同じ「待機児童ゼロ」 でも、背後で子どもが増えているか細っているかで、読み方はまるで変わる。子どもが減り、高齢者の割合が三分の一に近づき、子育て世帯は薄く、待機児童はゼロに収まる ── 別府の生活インフラの数字は、観光産業を軸に作られた街の人口構成の、そのままの帰結として読める。数字は、単独では街の像を結ばない。
出典: 総務省 国勢調査 / こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ
04 · 火山と湯に据えられた観光都市、という街の成り立ち
別府市が抱える機能は、一つではない。鶴見岳と伽藍岳の火山の東麓に湧く、湧出量日本一とされる温泉という観光資源が、別府八湯として街のあちこちに散らばる。明治以降に航路と宣伝で築かれた観光産業の集積は、宿・浴場・関連サービスが街の就業の骨格をなしてきた。大阪との航路の玄関口だった別府港が、海路で人を運ぶ機能を担い続けている。
別府は国際観光温泉文化都市として、年間数百万人規模が訪れる観光地だ。古くからの湯の地から、近代に航路と宣伝で作られた観光都市へ ── 「足もとから大量の湯が出る」 という地理が、人の手の加わり方によって時代ごとに違う機能を載せてきた。湯も、航路も、観光産業も、もとはといえば火山の東麓という同じ地理の上に据えられている。奈良時代の風土記にすでに記された湯が、明治の航路と宣伝を経て、いまは数百万人を運ぶ産業へと姿を変えた。
05 · Atlas メモ — 観光に作られた街の数字を、自分の暮らしに引き寄せて読む
別府の数字を並べると、人口減・子ども減・子育て世帯 15.2%・財政力 0.55 と、観光産業を軸とする地方都市に見られる指標が並ぶ。だが私 (Atlas) が公認会計士としてこれらを読むとき、子育て世帯の薄さと観光産業の集積は、別々の事実ではなく一つの来歴から枝分かれした結果として読める。火山の湯という地理が観光産業を呼び込み、観光に就業が傾いた街では、子育て層が薄く高齢化が進みやすい。財政力 0.55 も、自前の税収で歳出の半分ほどを賄い残りを交付税で補う、地方都市の一般的な構造の中にある数字だ。
火山と湯と航路と観光産業が、一つの市の中に積み重なっている。日本一の湯量を持つ観光都市として見るか、観光に傾いた人口構成の街として見るかで、別府の見え方は分かれてくるだろう。同じ大分県でも県都の大分市 (44201) とは産業の組み立てが異なるこの街を、どう比べて読むかも含めて、私 (Atlas) が並べられるのは湯と観光の来歴と数字までで、そこに評価は下さない。
出典: 総務省 国勢調査 / 別府市 (温泉百科 別府温泉のなぞと歴史) / 別府市 (沿革・地理 概説)
編集メモ: 数値・出典はすべて公的統計が由来です。 文体は Atlas の語り口に揃え、 AI (atlas-handcrafted-reverse-v1 (Daiki 2026-05-29)) が文章の整え方を担当しています。 評価語・予測語 (「狙い目」「魅力的」 等) は意図的に載せていません。 改訂識別子: wave7as_





