この街は、その面積の八割近くを森が占める。古くから木を伐り、挽き、運び出してきたこの山あいの地は、木を扱う営みのなかで出る端材や樹皮を、捨てずに燃やして電気をつくる道を選んだ。さらに、板を直角に重ねて貼り合わせた新しい建材を、地の木でつくり、自らの建物に用いてきた。木を電気に変え、木を建材に変える ── 山の木を、燃やしてなお、組んでなお使い切ろうとするこの試みが、この地の歩みを特徴づける。山の木で電気と建材をつくる地であるこの街は、平成の世に九つの町村が一つになって生まれ、人口を減らしてきた。真庭市の数字は、森と木材という来歴が刻まれた街の記録だ。
岡山県の北部、中国山地のほぼ中央に開ける山あいの市。人口は、二〇〇五年に九つの町村が一つになって発足した後、二〇〇五年の 51,782 人から二〇二〇年の 42,725 人へと、減ってきた。この市は新設の合併で発足したため、近年の人口は発足後の広い市域で読む。私 (Atlas) がここで読みたいのは「県北部の市」 という記号ではなく、森と木材という来歴が、現在の人口や財政にどう翻訳されているか、という因果の筋道だ。
01 · 数字で押さえる、いまの真庭市
二〇二〇年の国勢調査で、真庭市の人口は 42,725 人。約四万三千人だ。この市は二〇〇五年に九つの町村が一つになって新たに発足したため、統計は発足後の広い市域で読む。二〇〇五年の 51,782 人から、二〇一〇年の 48,964 人、二〇一五年の 46,124 人、二〇二〇年の 42,725 人へと、発足後の市域で減ってきた。
中身を見ると、山あいの木の地が年齢を大きく上げる姿が出る。六五歳以上の割合は二〇二〇年で 39.9% と、四割に迫った。子育て世帯の割合は二〇二〇年で 20.0% と、山あいの市としては高めで、粗出生率は二〇二〇年で千人あたり 5.7。保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロ。財政力指数は二〇二三年度に 0.29 と、自前の税収では歳出の三割弱しか賄えない水準にある。山の木で電気と建材をつくる地が、九つの町村と一つになった後、人口を減らす姿が数字に出ている。なぜこの形なのかは、森と木材と合併の来歴を遡らないと読めない。
出典: 総務省 国勢調査 / 総務省 地方財政状況調査 (財政力指数) / こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ / 国土交通省 不動産情報ライブラリ
02 · 森に覆われた地・木材の集散・木の電気と木の建材・九町村の合併 — 数字の背後にある来歴
この街を据えたのは、森に覆われた地と、木材の集散、木を使い切る試み、そして九つの町村の合併である。始まりの層は、森だ。この市は、その面積の八割近くを森が占め、北部には中国山地の連なりがそびえ、その裾野に高原が開ける。古くから木を伐り、挽き、運び出す木材の地として歩んできた。森に覆われた山あいが、この街の足もとにある。
この森が、いまの試みを呼んだ。この街は、合併に際して、木を中心にしたまちづくりを掲げた。木を扱う営みのなかで出る端材や樹皮を、捨てずに燃やして電気をつくり、板を直角に重ねて貼り合わせた新しい建材を地の木でつくって、自らの建物に用いてきた。木を電気に変え、木を建材に変える、木を使い切る試みである。市となった道のりも、この街を映す。この街は、二〇〇五年に山あいの九つの町村が一つになって、新たに発足した。森に覆われた地と、木材の集散、木の電気と木の建材、そして九町村の合併。面積の八割を森が占める山あいが、木を運び出す地から、木を残さず使い切る地へと歩みを変えてきた。それが真庭の現在だ。
出典: 真庭市/木材とバイオマス (市域の約79%を森林が占める西日本屈指の木材産地で、合併に際して木質バイオマスのまちづくりを掲げ、製材端材を燃料とする発電やCLT=直交集成板の建材化に取り組む 概説) / 真庭市/蒜山高原と勝山 (北部に中国山地の蒜山三座がそびえ、その裾野に蒜山高原が開ける・旧勝山町は木材の集散地 概説) / 真庭市 (岡山県北部で中国山地のほぼ中央・2005-3-31 勝山町/落合町/湯原町/久世町/美甘村/川上村/八束村/中和村/北房町の9町村が新設合併で発足・統計は発足後を扱う 概説)
03 · 山の木で電気と建材をつくる地で、九町村と一つになって人口を減らす
真庭市の特徴は、森と木材という来歴を抱えながら、九つの町村と一つになった後、人口を減らしている点にある。発足後の市域でみると、二〇〇五年の 51,782 人から二〇二〇年の 42,725 人まで、一五年で九千人ほどが減った。山あいに広い市域を抱えるこの市では、合併で加わった山里の集落から、若い世代が市の中心部やより大きな都市の方へ移って、街全体の年齢が大きく上がってきたと読める。六五歳以上の割合が二〇二〇年で 39.9% と四割に迫ったことは、その表れだ。
その一方で、保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロで、子育て世帯の割合は二〇二〇年で 20.0% と山あいの市としては高め、粗出生率は二〇二〇年で千人あたり 5.7。財政力指数 0.29 は、自前の税収では歳出の三割弱しか賄えない水準にある。人口は発足後に九千人ほど減り、高齢化は四割に迫り、財政の体力は税収だけでは薄い。木を伐り挽く古い生業を、端材の発電と地の木の建材へと読み替えた山あいの市が、それでもなお人口を減らしながら歩んでいる。木の使い方を更新した街であってさえ、九千人の流出は止まらなかった ── 産業の読み替えと人口の減りは、別々の速さで進む。
04 · 森に覆われた山あいが、木を使い切る試みを束ねた
真庭には、森に覆われた地に根ざした機能がいくつも刻まれている。一つは、面積の八割近くを森が占め、古くから木を伐り挽き運び出してきた、木材の地という来歴を持つ。もう一つが、木を扱う営みの端材や樹皮を燃やして電気をつくる、木の電気という性格を抱える。そして、板を直角に重ねて貼り合わせた建材を地の木でつくる、木の建材という顔を持つ。
面積の八割近くを森が占める山あい ── その地理が、木を集めて挽く営みを生み、やがて木を燃やし組んで使い切る試みを抱えた。森に覆われた地から、木材の集散、木の電気と木の建材、そして九町村の合併まで、木をめぐる機能が層を重ねてきた。岡山県の北部、中国山地のほぼ中央のこの市は、面積の八割を占める森を、燃やし、組み、使い切る方へと向け直した。真庭とは、その森の使い方の名でもある。
出典: 真庭市/木材とバイオマス (市域の約79%を森林が占める西日本屈指の木材産地で、合併に際して木質バイオマスのまちづくりを掲げ、製材端材を燃料とする発電やCLT=直交集成板の建材化に取り組む 概説) / 真庭市/蒜山高原と勝山 (北部に中国山地の蒜山三座がそびえ、その裾野に蒜山高原が開ける・旧勝山町は木材の集散地 概説) / 真庭市 (岡山県北部で中国山地のほぼ中央・2005-3-31 勝山町/落合町/湯原町/久世町/美甘村/川上村/八束村/中和村/北房町の9町村が新設合併で発足・統計は発足後を扱う 概説)
05 · Atlas メモ — 森が八割を占める地で、暮らしはどこに散るか
真庭の数字を並べると、合併後に減る人口・高齢化率 39.9%・子育て世帯の割合 20.0%・財政力 0.29 と、山あいの木の地が年齢を上げる指標が並ぶ。だが私 (Atlas) が公認会計士として帳簿を読むときの目で見ると、ここで読みたいのは、この街が「木を伐り挽き運び出すという古い生業の延長線上で、端材を電気に変え、地の木を新しい建材に変える、という試みを選んだ」 という、在来の産業を捨てずに読み替えた道筋だ。多くの山あいの地が、木材の値の下がりとともに森との関わりを細らせるなかで、この街は、木を最後まで使い切る方へ向かった。在来の産業を、新しい使い道へと接ぎ木する試みは、この街の数字には表れない厚みを示す。
もう一つ考えたいのは、この街が「面積の八割近くを森が占める」 という、地の性格そのものだ。人が住み暮らせる平地は、市域の一部にとどまる。それだけ広い森を抱えるということは、人口の密度が薄く、暮らしの拠点が点々と散らばる、ということでもある。広い市域の数字を、市の中心部の姿とそのまま重ねると、像を読み誤る。すると残るのは一つの問いだ ── 森が八割を占め、平地が市域のへりに散らばるこの市で、九千人を手放したあとの暮らしは、これからどこに寄り集まっていくのか。木を使い切る方へ舵を切った森の山あいが、人の住まいをどこへ束ね直すかは、真庭がこれから書く章にあたる。
出典: 総務省 国勢調査 / 真庭市/木材とバイオマス (市域の約79%を森林が占める西日本屈指の木材産地で、合併に際して木質バイオマスのまちづくりを掲げ、製材端材を燃料とする発電やCLT=直交集成板の建材化に取り組む 概説) / 真庭市/蒜山高原と勝山 (北部に中国山地の蒜山三座がそびえ、その裾野に蒜山高原が開ける・旧勝山町は木材の集散地 概説) / 真庭市 (岡山県北部で中国山地のほぼ中央・2005-3-31 勝山町/落合町/湯原町/久世町/美甘村/川上村/八束村/中和村/北房町の9町村が新設合併で発足・統計は発足後を扱う 概説)
編集メモ: 数値・出典はすべて公的統計が由来です。 文体は Atlas の語り口に揃え、 AI (atlas-handcrafted-reverse-v1 (wave-cs1 2026-06-05)) が文章の整え方を担当しています。 評価語・予測語 (「狙い目」「魅力的」 等) は意図的に載せていません。 改訂識別子: wavecs1_





