この街の海では、はるか縄文の昔から、人が素潜りで貝や海藻を採ってきた。海に潜って獲物を採る海女の漁は、いまもこの海に受け継がれている。そして明治の半ば、この街の湾に浮かぶ島で、人の手で真珠を育てる養殖が、世界で初めて成し遂げられた。素潜りの漁と真珠の養殖が重なるこの街は、人口を大きく減らしてきた。鳥羽市の数字は、海女の素潜りと、世界初の真珠養殖という来歴が刻まれた街の記録だ。
三重県の東部、志摩半島の付け根に位置し、入り組んだ海岸線と湾に浮かぶ島々に開ける市。人口は二〇〇〇年の 24,945 人から、二〇一〇年の 21,435 人、二〇二〇年の 17,525 人へと、大きく減ってきた。私 (Atlas) がここで読みたいのは「真珠のまち」 という記号ではなく、海女の素潜りと世界初の真珠養殖という来歴が、現在の人口や財政にどう翻訳されているか、という因果の筋道だ。
01 · いまの鳥羽市を、数字で見る
直近の国勢調査で人口は約一万八千人 (二〇二〇年 17,525 人)。その推移は、はっきりとした減少だ。二〇〇〇年の 24,945 人から、二〇〇五年の 23,067 人、二〇一〇年の 21,435 人、二〇一五年の 19,448 人、そして二〇二〇年の 17,525 人へと、二〇年で七千人あまり、三割近くが減った。
中身を見ると、入り組んだ海岸と離島を抱えた海の街が縮んでいく姿が出る。六五歳以上の割合は二〇〇〇年の 22.5% から二〇二〇年の 39.3% へと上がり、四割に迫った。子育て世帯の割合は二〇二〇年で 15.1% と低め、保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロ。財政力指数は二〇二三年度に 0.40 と、自前の税収では歳出の四割ほどしか賄えず、交付税への依存が大きい。海女と真珠の海の街が、人口を大きく減らしながら高齢化を深める姿が数字に出ている。なぜこの形なのかは、海女の漁と真珠の養殖の来歴を遡らないと読めない。
出典: 総務省 国勢調査 / 総務省 地方財政状況調査 (財政力指数) / こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ / 国土交通省 不動産情報ライブラリ
02 · 海女の素潜り・世界初の真珠養殖・入り組んだ海岸 — 数字の背後にある来歴
この街の骨格は、入り組んだ海岸と豊かな海、そしてその海で営まれてきた漁と養殖によって据えられている。古い層は、海女の漁である。この街の海岸は複雑に入り組み、波の穏やかな入り江と豊かな漁場をもたらした。この海では、はるか昔から、人が素潜りで貝や海藻を採ってきた。市内の縄文の遺跡からは、当時すでに素潜りの漁が営まれていたことをうかがわせる貝殻が出土している。海に潜って獲物を採る海女の漁は、この地の暮らしの根に深く結びつき、いまもこの海には多くの海女が暮らす。
そして、この街の海は、もう一つの来歴を生んだ。明治二六年 (一八九三年)、この街の湾に浮かぶ島で、一人の人物が、貝に核を入れて人の手で真珠を育てる養殖に、世界で初めて成功した。それまで偶然にしか得られなかった真珠を、人の手で育てる道を開いたこの成功は、後にこの地の真珠を世界へと送り出す産業の起点となった。波の穏やかな入り江という地理が、海女の素潜りを育み、また真珠の貝を育てる養殖の場ともなった。海女の素潜りと、世界初の真珠養殖が重なる ── この街の形は、入り組んだ海岸という地理が抱えた、漁と養殖の来歴の上に立っている。
出典: 鳥羽市「海女文化」 (鳥羽志摩の海女・縄文の白浜遺跡の素潜り漁の痕跡 概説) / ミキモト真珠島 (1893 御木本幸吉が湾の島で世界初の真珠養殖に成功 概説)
03 · 海の街で、人口を大きく減らす
鳥羽市の特徴は、海女と真珠という来歴を抱えながら、入り組んだ海岸と離島を抱えた海の街として、人口を大きく減らしている点にある。二〇〇〇年の 24,945 人から二〇二〇年の 17,525 人まで、二〇年で三割近くが減った。漁業や真珠の養殖、そして海を生かした観光が街の暮らしを支えてきたが、これらの産業は、漁場や海の状況、訪れる人の動きに左右される面を持つ。入り組んだ海岸と離島を抱える地形は、独自の海の文化を育てた一方で、新たな働く場を広く呼び込みにくい。若い世代が働く場を求めて都市部へ移り、街は大きく縮んできたと読める。六五歳以上の割合が二〇二〇年で 39.3% と四割に迫り、子育て世帯の割合が 15.1% と低めなのも、その人口構成の表れだ。
その一方で、保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロだ。子育て世帯そのものが少ないなかで、保育の受け皿は保たれていると読める。財政力指数 0.40 は、自前の税収では歳出の四割ほどしか賄えない水準で、交付税への依存が大きい。離島を抱えた海の街として、自前の税源には限りがあることを映している。海の街は、いまは人口を大きく減らしながら高齢化を深めている。人口は大きく減り、高齢化は四割に迫り、財政の体力は弱め。入り組んだ海岸と離島を抱える地形が、独自の海の文化を育てた一方で、新たな働く場を広く呼び込みにくく、若い世代を留めにくい。
04 · 海女の素潜りと真珠の養殖が重なる海の街
鳥羽は、固有の機能をいくつも抱えている。一つは、縄文の昔から営まれ、いまも海に受け継がれる海女の素潜りという来歴で、海に潜って獲物を採る漁が暮らしの根に結びついた古層を持つ。もう一つが、湾に浮かぶ島で世界で初めて成し遂げられた真珠の養殖という性格で、この地の真珠を世界へ送り出す産業の起点となった。そして、入り組んだ海岸と離島という地形が、漁と養殖、そして海を生かした観光という、海に根ざした構造をこの街に与えている。
鳥羽は、海女の素潜りと真珠の養殖が重なる海の街だ。縄文以来の海女の素潜りから、湾の島で成った世界初の真珠養殖へ ── 「志摩半島の付け根で海岸が複雑に入り組む」 という地理が、波の穏やかな入り江を生み、海女の漁と真珠の養殖を育てて、街の骨格を据えた。志摩半島の付け根、複雑に入り組んだ海岸が波の穏やかな入り江をいくつも生んだ。その入り江で、縄文以来の海女が素潜りで漁をし、湾の島では世界で初めて真珠が養殖された。海が、二つの生業をともにこの街に抱かせている。
出典: 鳥羽市「海女文化」 (鳥羽志摩の海女・縄文の白浜遺跡の素潜り漁の痕跡 概説) / 鳥羽市「鳥羽市の沿革」 (1954 鳥羽町ほか 8 町村合併で市制・鳥羽湾と離島 概説)
05 · Atlas メモ — 海が二つの生業を抱えた街で
鳥羽の数字を並べると、大きく減る人口・高齢化率 39.3%・子育て世帯の割合 15.1%・財政力 0.40 と、海の街が縮んでいく厳しい指標が並ぶ。だが私 (Atlas) が会計の目でこの街を読むとき、読みたいのは、この大きな人口減と、海に根ざした産業の構造との、つながりだ。漁業や真珠の養殖、海を生かした観光は、いずれも海の状況や訪れる人の動きに左右される面を持つ。入り組んだ海岸と離島を抱える地形は、独自の海の文化を育てた一方で、工場のような新たな働く場を広く呼び込みにくい。海に深く根ざした街が、その海に関わる産業の浮き沈みのなかで、若い働き手を保ちにくい ── この街の人口減は、その筋道を映している。
もう一つ考えたいのは、この街が「世界で初めて」 という来歴を、海とともに持つ点だ。それまで偶然にしか得られなかった真珠を、人の手で育てる道を、この街の湾の島で開いた。縄文以来の海女の素潜りという古い漁と、人の手で真珠を育てるという近代の養殖が、同じ海に重なっている。人口を大きく減らすなかで、街がこの海の文化と産業をどう次の世代へつないでいくかは、海に根ざした街に固有の問いでもある。人口を大きく減らすなかで、街がこの海の文化と産業をどう次の世代へつないでいくかは、海に根ざした街に固有の問いでもある。私 (Atlas) が並べられるのは、縄文以来の海女の素潜りと世界初の真珠養殖という来歴と、二〇年で三割近くを失い高齢化率が 39.3% に迫った数字、その二つだ。縄文以来の素潜りと、人の手で真珠を育てた近代の技が、同じ入り江にいまも重なっている。その海の厚みは数字には載らず、四割に迫る高齢化はその海の物語の中までは語ってくれない。
出典: 総務省 国勢調査 / 鳥羽市「海女文化」 (鳥羽志摩の海女・縄文の白浜遺跡の素潜り漁の痕跡 概説) / ミキモト真珠島 (1893 御木本幸吉が湾の島で世界初の真珠養殖に成功 概説)
編集メモ: 数値・出典はすべて公的統計が由来です。 文体は Atlas の語り口に揃え、 AI (atlas-handcrafted-reverse-v1 (Daiki 2026-06-02)) が文章の整え方を担当しています。 評価語・予測語 (「狙い目」「魅力的」 等) は意図的に載せていません。 改訂識別子: wave15_8





