この街にある一つの化学の会社は、長く実現が難しいとされてきた、明るく輝く青い光を放つ素子を、世界で初めて製品にした。それまで赤と緑しかなかった発光の素子に青が加わったことで、あらゆる色の光を、わずかな電力で生み出せるようになった。この技が、世界の照明や表示のあり方を大きく変えていく。そして同じこの街の湾には、大きな火力の発電所が並ぶ。一つの会社の技が街を世に知らしめたこの街は、合併で市域を広げてきた。阿南市の数字は、化学の会社と湾の電力という来歴が刻まれた街の記録だ。
徳島県の東部、四国山地の南東の縁と橘湾を抱える市。人口を読むには、合併を踏まえる必要がある。二〇〇六年、旧阿南市は隣り合う二つの町と新設合併して、いまの阿南市となった。合併の前の二〇〇五年の人口は 54,925 人で、合併を経た二〇一〇年は 76,063 人。そこから二〇二〇年の 69,470 人へと推移してきた。私 (Atlas) がここで読みたいのは「光のまち」 という呼び名そのものではなく、化学の会社と湾の電力という来歴が、現在の人口や財政にどう翻訳されているか、という因果の筋道だ。
01 · いまの阿南市を、数字で見る
二〇二〇年の国勢調査で、この市の人口は 69,470 人。七万人にあと一歩というところにある。この市の人口を読むには、合併を踏まえる必要がある。二〇〇六年、旧阿南市は隣り合う二つの町と新設合併して、いまの阿南市となった。合併の前の二〇〇五年の人口は 54,925 人で、合併を経た二〇一〇年は 76,063 人。そこから二〇一五年の 73,019 人、二〇二〇年の 69,470 人へと、合併後はなだらかに減ってきた。本記事の二〇〇五年と二〇一〇年のあいだの人口の段差は、この合併による市域の拡大を映している。
中身を見ると、化学と電力の産業を抱えた街らしい姿が出る。六五歳以上の割合は二〇〇〇年の 22.3% から二〇二〇年の 33.3% へと上がったが、四割に迫る地方都市も多いなかで、三割ほどにとどまる。子育て世帯の割合は二〇二〇年で 21.0%、保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロ。財政力指数は二〇二三年度に 0.75 と、自前の税収で歳出の四分の三ほどを賄える、地方都市としては高めの水準にある。世界初の青い光を実用化した街が、合併後の市域で人口をほぼ保ちながら比較的若さを残す姿が数字に出ている。なぜこの形なのかは、化学の会社と湾の電力の来歴を遡らないと読めない。
出典: 総務省 国勢調査 / 総務省 地方財政状況調査 (財政力指数) / こども家庭庁 保育所等関連状況取りまとめ / 国土交通省 不動産情報ライブラリ
02 · 世界初の青い光・橘湾の電力・市域を広げた合併 — 数字の背後にある来歴
この街の来歴は、市内の化学の会社が成し遂げた世界初の青い光と、湾に並ぶ火力の電力、そして市域を広げた合併からたどれる。中心の層は、化学の会社である。昭和の半ば、この地に小さな化学の会社が興った。やがてその会社は、長く実現が難しいとされてきた、明るく輝く青い光を放つ素子の開発に取り組み、平成の初め、世界で初めてその製品化に成功した。それまで光を放つ素子には赤と緑しかなく、青を加えることができなかったが、青が加わったことで、あらゆる色の光を、わずかな電力で生み出せるようになった。この技は、世界の照明や表示のあり方を大きく変え、街はこの一つの会社の技によって、世に知られるようになった。
この街を支えたもう一つの土台は、電力である。この街の抱える湾の岸には、大きな火力の発電所が並び、この地は電力をつくる量で国内でも屈指の地となった。化学の会社の青い光と、湾の火力の電力 ── 光とエネルギーが、この街の産業の二つの柱となった。市となった道のりも、この街を映す。この地は昭和の半ばに二つの町が合わさって市となり、二〇〇六年には隣り合う二つの町と新設合併して、四国山地の縁から橘湾の岸までを市域に抱えた。世界初の青い光と、湾の電力 ── 阿南の現在は、四国山地の縁と橘湾を抱えたこの地が抱えた、化学と電力のこの来歴から続いている。
出典: 阿南市「光のまち」 (市内の化学会社が 1993 高輝度青色発光ダイオードを世界で初めて製品化・橘湾の火力発電 概説) / 阿南市 (1958 富岡町+橘町の合併で市制・2006 旧阿南市+那賀川町+羽ノ浦町 新設合併・四国山地と橘湾 概説)
03 · 化学と電力の街で、合併後の人口をほぼ保ち比較的若さを残す
阿南市の特徴は、世界初の青い光を実用化した化学の会社と、湾の電力という来歴を抱えながら、合併後の市域の人口をほぼ保ち、比較的若さを残している点にある。合併を経た二〇一〇年の 76,063 人から二〇二〇年の 69,470 人まで、一〇年で七千人ほどが減ったが、なお七万人ほどを保っている。世界の照明や表示を変えた化学の会社と、湾の火力の電力という、量と質の両面で確かな産業が街に根づき、そこに働く世帯が街にとどまってきたことが、人口を大きく崩さずに保ってきた支えだと読める。六五歳以上の割合が二〇二〇年で 33.3% と三割ほどにとどまるのも、その表れだ。
その一方で、保育の待機児童は二〇二四年・二〇二五年ともゼロだ。財政力指数 0.75 は、自前の税収で歳出の四分の三ほどを賄える水準で、地方都市としては高めにある。世界の照明を変えた化学の会社と、国内屈指の電力をつくる発電所が、この地に確かな税源を与えていると読める。世界初の青い光を実用化した街は、いまは合併後の市域で人口をほぼ保ちながら、比較的若さを残している。崩れずに保たれた人口も、四割に届かない高齢化も、高めの財政も、世界を相手にする青い光の技と、社会の基盤を支える湾の電力という、性格の異なる二つの産業が一つの市域に同居している、その同じ土台から伸びている。財政力 0.75 という地方都市にしては高い値だけを見ても、地方の街がここまで体力を保てている理由 ── 質の産業と量の産業が二本の柱で支える構造までは読めない。
04 · 二本の産業の柱が、人口を崩さない街
阿南には、世界を相手にする青い光の技と、社会の基盤を支える湾の電力という、性格の異なる二本の産業の柱が同居している。市内の化学の会社が、長く難しいとされた明るく輝く青い光を放つ素子を世界で初めて製品化したという来歴は、世界の照明や表示のあり方を変えた技を街に持つ。抱える湾の岸に大きな火力の発電所が並び、電力をつくる量で国内でも屈指となった性格は、光とエネルギーを産業の二つの柱とする。そして、四国山地の縁と橘湾を抱えたこの地が、化学の会社の立地と、湾の電力を呼んだ。
阿南は、世界初の青い光を実用化し、湾に電力をつくる街だ。一つの化学の会社が成し遂げた世界初の青い光と、湾に並ぶ火力の電力 ── 「四国山地の縁と橘湾を抱える」 という地理が、化学の会社の根づく場を与え、湾の電力を呼んで、街の輪郭をかたちづくった。世界を相手にする技と、社会の基盤を支える電力。性格の異なる二つの産業が一つの市域に同居している ── 阿南の輪郭は、四国山地の縁と橘湾を抱えたこの地が、その両方を呼び込んだところに引かれている。
出典: 阿南市「光のまち」 (市内の化学会社が 1993 高輝度青色発光ダイオードを世界で初めて製品化・橘湾の火力発電 概説) / 阿南市 (1958 富岡町+橘町の合併で市制・2006 旧阿南市+那賀川町+羽ノ浦町 新設合併・四国山地と橘湾 概説)
05 · Atlas メモ — 質の技と量の電力という二本柱で阿南を読む
阿南の数字を並べると、合併後に微減の人口・高齢化率 33.3%・子育て世帯の割合 21.0%・財政力 0.75 と、地方都市としては比較的若さと体力を残す指標が並ぶ。会計の目で帳簿を読む癖で言えば、まず断っておきたいのは、この市の人口の段差が、二〇〇六年の合併によるものだという点だ。合併の前の二〇〇五年の人口は 54,925 人で、二〇一〇年の 76,063 人という数字は、隣り合う二つの町と新設合併した結果だ。人口の数字を時系列で読むとき、二〇〇五年と二〇一〇年のあいだのこの段差を見落とすと、街の姿を読み誤る。だからこそ、合併前の値を断ったうえで読む必要がある。
そのうえで読みたいのは、地方の街でありながら、財政力 0.75 という高めの水準を保ち、高齢化率も三割ほどにとどまっている点だ。地方の街は、大都市から離れるほど、産業や働く場に乏しく、人口を減らし高齢化を深めやすい。阿南がそうならずに体力を保ってきたのは、世界の照明や表示を変えた化学の会社という、世界とつながる技を持つ産業と、国内でも屈指の電力をつくる発電所という、量の確かな産業が、この一つの市域に根づいているからだと読める。世界を相手にする技と、社会の基盤を支える電力という、性格の異なる二つの産業が、地方の街に確かな足場を与えている、という筋道だ。一つの会社が世界を変える技を生み出すことが、その会社のある街そのものの足場をも支える ── 阿南の数字は、そうした産業と街の結びつきを映している。合併後の市域で人口をほぼ保つなかで、街がこの技と電力の来歴をどう次の世代へつないでいくかは、橘湾岸の街に固有の問いだ。「光のまち」 という呼び名で流すのと、「世界初の青い光を実用化し、湾に電力をつくる街」 と読むのとでは、同じ財政力 0.75 の支えがまるで違って見える。人口の段差は二〇〇六年の合併によるもので、二〇〇五年の値を断ったうえで合併後の傾きを読む必要がある。そのうえで、世界を変える技と社会を支える電力という二本の柱が、地方の街にしては高い財政力と若さを保たせている。世界へ届く技がその街自身の足場をも支える ── この二本柱を住み続ける安心としてどれだけ高く見るかは、根を下ろす本人の胸算用にゆだねられている。
出典: 総務省 国勢調査 / 阿南市「光のまち」 (市内の化学会社が 1993 高輝度青色発光ダイオードを世界で初めて製品化・橘湾の火力発電 概説) / 阿南市 (1958 富岡町+橘町の合併で市制・2006 旧阿南市+那賀川町+羽ノ浦町 新設合併・四国山地と橘湾 概説)
編集メモ: 数値・出典はすべて公的統計が由来です。 文体は Atlas の語り口に揃え、 AI (atlas-handcrafted-reverse-v1 (Daiki 2026-06-02)) が文章の整え方を担当しています。 評価語・予測語 (「狙い目」「魅力的」 等) は意図的に載せていません。 改訂識別子: wave16_f




